新生児マススクリーニングとは
新生児マススクリーニングとは
「新生児マススクリーニング」とは、産まれてから数日後の間に すべての赤ちゃんを対象に行われる検査です。
「新生児マススクリーニング」とは、産まれてから数日後の間にすべての赤ちゃんを対象に行われる検査です。新生児のかかとから採取した血液により、内分泌や代謝など19種類の病気を検査します。病気の中にはいち早く発見することで、障がいの発生を防いだり、効果的な治療を受けられたりできるものもあります。
さらに希望者には、早期診断・治療が必要な「ラインゾーム病(ファブリー病、ポンペ病、ゴーシェ病、ムコ多糖症I型・II型)」、脊髄性筋萎縮症(SMA)、重症複合免疫不全症(SCID)の検査ができます。
この検査は新生児マススクリーニングで使用した採血ろ紙の一部を使用するので、赤ちゃんへの身体的負担はありません。
費用について
追加検査は任意のため、費用は自費です。
ファブリー病、ポンペ病、ゴーシェ病、ムコ多糖症I型・II型、脊髄性筋萎縮症(SMA)、重症複合免疫不全症(SCID)の病気の検査で1万1000円程度です。(分娩施設より変わります。)
対象疾患について
ライソゾームとは
私たちの体の細胞は、生きていくために必要な成分やエネルギーを毎日作り出しています。一方でいらなくなった物質は細胞の中の「ライソゾーム」というところで分解され、排出されます。ライソゾーム中の酵素が働かなかったり、働きが低くなったりすると、分解されるべき物質を消化できなくなります。その結果として細胞内に不要な物質が蓄積することで、細胞がうまく機能しなくなり体のさまざまな部分に症状があらわれる病気です。
ライソゾーム病の人の割合は、新生児7,700人に1人の割合でいるという報告があります。とても稀で診断や治療が難しい病気であるため、特定疾患(難病)や小児慢性特定疾患に指定され、疾患が確定すれば、国や地方自治体の医療費助成制度の対象となります。
ポンペ病とは
ポンペ病はライソゾームの中の酸性アルファ・グルコシダーゼという酵素の働きが低くなっていることで、グリコーゲンという物質が分解されにくくなり、全身のいろいろな臓器の細胞に蓄積して、さまざまな症状を引き起こします。
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主な症状
- 頭痛
- 心機能障害
- 呼吸困難
- 呼吸器感染症
- 誤嚥性肺炎
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全身に現れやすい症状
- 筋力の低下
- 腰痛
- 成長・発達の遅れ
※すべての症状が現れるとは限りません。
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具体的な症状
- 体を支える筋力の力が弱くなるため、寝返りやお座り、ハイハイ、歩行などの運動機能の発達に遅れが見られます。
- 呼吸するときに必要な筋力が弱いため、呼吸しにくくなることがあります。眠っている間に時々呼吸が止まってしまうため(睡眠時無呼吸症候群)、起床時に頭痛があることがあります。
- 心臓が大きくなって、不整脈や心不全など、心臓に障害を起こすことがあります。
- 食べ物を飲み込むときに必要な筋力が弱いため、食べ物が気管に入って肺炎を起こすことがあります。
ファブリー病とは
ファブリー病はライソゾームの中のアルファ・ガラクトシダーゼという酵素の働きが低くなっていることで、グロボトリアオシルセラミドという物質が分解されず、全身のいろいろな臓器の細胞に蓄積して、さまざまな症状を引き起こします。
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主な症状
- 脳血管障害
- 聴覚低下
- 心機能障害
- 腎機能障害
- 胃腸の症状
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全身に現れやすい症状
- 汗をかかない
- 汗をかきにくい
- 皮膚の赤い発疹
- 手足の痛み
※すべての症状が現れるとは限りません。
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具体的な症状
- 手足の先に痛みや痺れを感じます。気温の変化や運動によってひきおこされることがあり、暑い夏やお風呂、運動が苦手だったりします。時々、発作的に激しい痛みが出ることがあります。
- 汗をかきにくくなるため、体温の調節が難しく、発熱しやすくなります。
- 腹痛や下痢などの胃腸の症状が出やすくなります。
- 腹部やお尻、陰部、太腿などに小さな赤い発疹が出ます。痛みや痒みはありません。
ムコ多糖症I型とは
ムコ多糖症I型はライソゾームの中のアルファ‐L‐イズロニダーゼという酵素の働きが低くなっていることで、グリコサミノグリカンという物質が分解されにくくなり、全身の骨や筋肉、内臓などの組織にグリコサミノグリカンが蓄積して、角膜混濁や特徴的顔貌などさまざまな症状を引き起こします。
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主な症状
- 特徴的な顔貌
- 低身長
- 臍ヘルニア、鼠径ヘルニア
- 繰り返す中耳炎
- 角膜混濁、緑内障
- 蒙古斑
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全身に現れやすい症状
- 肝臓・脾臓が
大きくなる - 骨、関節の変形
※すべての症状が現れるとは限りません。
- 肝臓・脾臓が
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具体的な症状
- からだ全体に蒙古斑がある場合があります。
- 頭が大きい、首が短い、舌が大きい、唇が厚いなど、特徴的な顔貌がみられます。
- 角膜混濁による視力低下や難聴、中耳炎をくり返すようになります。
- 肝臓や脾臓が大きくなるためお腹がぽっこりします。
- 心臓の弁膜症や臍ヘルニア、鼠径ヘルニアになりやすくなります。
ムコ多糖症Ⅱ型とは
ムコ多糖症Ⅱ型はライソゾームの中のイズロン酸‐2‐スルファターゼという酵素の働きが低くなっていることで、グリコサミノグリカンという物質が分解されにくくなり、全身の骨や筋肉、内臓などの組織にグリコサミノグリカンが蓄積して、関節症状や骨変形などさまざまな症状を引き起こします。
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主な症状
- 急激な成長
- 発語の遅れ
- 臍ヘルニア、鼠径ヘルニア
- 繰り返す中耳炎
- 蒙古斑
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全身に現れやすい症状
- 肝臓・脾臓が
大きくなる - 骨、関節の変形
※すべての症状が現れるとは限りません。
- 肝臓・脾臓が
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具体的な症状
- からだ全体に蒙古斑がある場合があります。
- 幼児期に急激に成長し、大きな鼻や厚い唇、大きな舌、歯ぐきが厚い、耳たぶが厚く硬いなどの特徴があります。
- 肝臓や脾臓が大きくなるためお腹がぽっこりします。
- 心臓の弁膜症や臍ヘルニア、鼠径ヘルニアになりやすくなります。
ゴーシェ病とは
ゴーシェ病は細胞のライソゾームの中のグルコセレプロシダーゼという酵素の働きが低くなっていることで、グルコセレブロシドという物質が分解されにくくなり、肝臓や脾臓、骨髄などにグルコセレブロシドが蓄積して、いろいろな症状を引き起こします。
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主な症状
- けいれん
- 斜視
- 口を開けにくい
- 肝臓・脾臓が
大きくなる
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全身に現れやすい症状
- 骨の痛み
- 骨の変形
- 骨折しやすい
- 出血しやすい
- 血が止まりにくい
- 貧血
- 成長の遅れ
※すべての症状が現れるとは限りません。
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具体的な症状
- 肝臓・脾臓が腫れて、見た目でも判るくらいにお腹が大きくなります。
- 貧血になったり、血小板が少なくなるため出血しやすくなったりします。
- 骨が弱くなり、変形しやすく、場合によっては骨がとても痛くなったり、骨折を起こしやすくなります。
- 病気のタイプによっては、神経症状(けいれんなど)を伴うことがあります。
脊髄性筋萎縮症(SMA)とは
脊髄性筋萎縮症はSMN蛋白を十分に産生することができないため脊髄の前角細胞(運動神経)が変性し、進行性の筋力低下、筋萎縮を引き起こす疾患です。重症型の場合、乳児期に運動発達がとまり、哺乳や食べ物の飲み込み、呼吸ができなくなるなどの症状を引き起こすことがあります。
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主な症状
- 弱い泣き声
- 哺乳困難
- 呼吸困難
- 嚥下困難
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全身に現れやすい症状
- 四肢や体幹の
筋力低下 - 成長の遅れ
※すべての症状が現れるとは限りません。
- 四肢や体幹の
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具体的な症状
- 全身に筋力低下がみられ、首がすわらない、お座りができないなど、運動発達に遅れがみられることがあります。
- 呼吸するときに必要な筋丙が弱いため、咳の力が弱い、呼吸が浅く弱いことがあります。
- 母乳やミルクを飲めない、誤嚥を起こしやすいなどの嚥下障害がみられることがあります。
重症複合免疫不全症(SCID)とは
重症複合免疫不全症は生まれつきの免疫系の異常により、血液中の免疫に関わる細胞であるTリンパ球がほとんど存在せず、病原体に対する抗体をつくるBリンパ球も機能しなくなることで、病原体から体を守ることができず感染症を繰り返す病気です。
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主な症状
- 肺炎、下痢
- 口腔内カンジダ
- 中耳炎、敗血症
- 生ワクチン(ロタウイルスワクチン、BCGワクチンなど)に対する重篤な副反応
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全身に現れやすい症状
- 発育障害
- 皮膚疾患
※すべての症状が現れるとは限りません。
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具体的な症状
- 乳児期早期に、肺炎、敗血症、胃腸炎などの重篤な感染症を繰り返すことがあります。
- 慢性の下痢・吸収障害のために、体重の増えが悪くなることがあります。
- 重篤な肺炎や敗血症で発症し、診断が遅れて適切な治療が受けられないまま亡くなられてしまうことがあります。
- 重症複合免疫不全症の赤ちゃんに、生ワクチン(ロタウイルスワクチン、BCGワクチンなど)を接種してしまうと、命にかかわる重篤な副反応を引き起こす可能性があります。