トピックス

IBUKI通信[第3号]より情報をお届けいたします。2016.04.01

ごあいさつ

平素はライソゾーム病のパイロット検査にご高配を賜り、厚くお礼申し上げます。お陰さまで、福岡県では、2014年7月に福岡市を中心に30施設で検査を開始し、2016年2月末現在、糸島市、春日市、大野城市、志免町、水巻町、飯塚市、直方市、田川市、嘉麻市、田主丸町、福津市からも参加され、54施設へと拡大しました。わが国では、ライソゾーム病は医療費助成対象の難病であり、ファブリー病やポンペ病など31疾患が指定難病の対象となっています。難病情報センターの情報では、平成26年度のライソゾーム病患者数(特定疾患医療受給者証所持者数)は1,061名となり前年度より64名増えています。
ファブリー病やポンペ病などの治療において、酵素補充療法(ERT)により日常生活におけるQOLの改善が見込めるようになったことは大きな進歩ですが、早期発見、早期治療を行わないとERTの最大限の効果を得ることができないため、新生児期における検査が非常に重要となります。難病対策の基本である新生児でのライソゾーム病検査を年間数万の規模で行えているのは、現在のところ国内では、熊本県と福岡県の一部のみであり、先進的な取り組みです。
患者さんが埋もれることなく検査で見つかり早期に適切な治療が受けられることを願いつつ、検査状況の報告をさせていただきます。

一般社団法人IBUKI理事長 廣瀨伸一(福岡大学医学部小児科 主任教授)

患者と家族の会主催のセミナーのご案内

セミナーimage

一般社団法人「全国ファブリー病患者と家族の会」(別称:ふくろうの会)主催の「九州・沖縄ブロック福岡オープンセミナー2016」が平成28年3月27日(日)福岡大学病院にて開催されます。ふくろうの会は、難病医療推進を通じ、患者と家族が一体となって医療の発展と向上に寄与し、また医療サービスの地域間格差を是正し、会の発展とあわせて会員相互の融和と親睦をはかることを目的として2002年に設立された組織です。会では、セミナーの開催やホームページの運営を行い、少しでも患者・家族のQOLの向上、悩みや不安を軽くできるよう活動されています。

実施状況

本検査は、福岡県産婦人科医会の福岡ブロック会や筑豊ブロック会のご支援と福岡県内54の分娩取扱い施設のご協力をいただきながら、2014年7月に開始以来、2016年2月末までに22,575名の新生児を検査いたしました。
ファブリー病スクリーニングでは精密検査が必要となった児は13名で、4名がファブリー病、6名は異常なしと診断され、2名が精査中で、1名が精密検査中止、という状況です。
ポンペ病スクリーニングでは精密検査が必要となった児は16名で、1名が遅発型ポンペ病、12名は異常なしと診断され、3名が精査中です。

  • ファブリー病スクリーニング

    福岡県 研究項目受検数 要精密数 確定数 発見頻度
    2014年度(7月~3月) 8,487 5 3 1/2,829
    2015年度(4月~2月) 14,088 8 1 1/14,088

    患者発見頻度:1/5,644(22,575名検査、4名発見)

  • ポンペ病スクリーニング

    福岡県 研究項目受検数 要精密数 解析対象者数 確定数 発見頻度
    2014年度(7月~3月) 8,487 8 0 0 -
    2015年度(4月~2月) 14,088 8 1 1 1/14,088

    ※解析対象者数:確定数ではない。遺伝子検査を必要とする症例。
    患者発見頻度:1/22,575(22,575名検査、1名発見)

施設数の推移image

病気の原因

ファブリー病

ファブリー病は、細胞内の小器官であるライソゾームの中でスフィンゴ糖脂質の分解を行う酵素のひとつであるα-ガラクトシダーゼAをつくる遺伝子の異常によりα-ガラクトシダーゼA酵素の活性が欠損または低下することにより生じます。このα-ガラクトシダーゼAの酵素活性異常により、スフィンゴ糖脂質、特にグロポトリアオシルセラミドという物質が分解されずに、臓器の細胞に進行性に蓄積します。
典型的ファブリー病では、α-ガラクトシダーゼA活性は欠損しており、心臓、腎臓、血管、皮膚、角膜、神経などの全身の臓器にスフィンゴ糖脂質の蓄積が生じ、多臓器障害を起こします。
これに対し、心ファブリー病では、α-ガラクトシダーゼA活性はわずかながらも残存しており、主に心臓にスフィンゴ糖脂質が蓄積し、心臓機能障害が生じます。心ファブリー病で、臓器障害がなぜ心臓に限局しているのかはまだ明らかではありません。

ポンぺ病

ポンペ病(糖原病2型)は、グリコーゲンの分解を行う酵素のひとつである酸性α-ガラクトシダーゼをつくる遺伝子の異常により酸性α-ガラクトシダーゼA活性が欠損または低下することにより生じます。グリコーゲンをグルコースに分解できず、ライソゾームの中にどんどん蓄積していきます。その結果、ライソゾームが膨らみ、まわりの筋肉の働きが悪くなります。なかでも骨格筋、心筋および平滑筋が主に障害されます。

※検査に係る費用等の詳細は、かかりつけの産科医療機関にお尋ねください。