トピックス

「つなぐだより福岡」創刊号(第1号)2020年12月

ごあいさつ

謹啓 時下、皆様にはますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
 平素は弊社の新生児スクリーニング事業にご支援、ご協力を賜り、厚く御礼申し上げます。
 さて今般、弊社は一般社団法人IBUKI様がこれまで福岡県内で発行されておりました「IBUKI通信」の情報発信を継承することになりました。お届けする時期が予定より遅くなりましたが、今回、新たに発行元として制作しました第1号をお送りいたします。
 弊社としましても「IBUKI通信」同様、ライソゾーム病検査の実施状況や新生児スクリーニングに関わる情報を中心とした紙面構成で年2回(春秋)の発行を継続していくことにしております。
 また、新名称は「つなぐだより」と命名いたしました。この言葉には、赤ちゃんの命をつなぐ、未来をつなぐ、新生児スクリーニングに関わる人たちをつなぐ、という思いを込めております。さらには、新生児スクリーニング事業が担う大事な使命をしっかりとつないでいくという私どもの気持ちも込めております。
 関係の皆様方におかれましては、今後とも弊誌のご愛読を頂き、変わらぬご支援を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。
謹白

KMバイオロジクス株式会社
新生児スクリーニングセンター長 山内 芳裕

実施状況

 本検査は、福岡県産婦人科医会のご支援の下、各分娩取扱い施設様のご協力と保護者の方々のご理解を得ながら実施主体である一般社団法人IBUKIにて 運営なされており、契約施設における直近の検査希望率は92%程度となっています。以下のとおり実施状況をご紹介させていただいます。
 ファブリー病及びポンペ病スクリーニングは2014年7月に検査を開始以来、2020 年9月末までに175,136名の新生児が検査なされました。検査開始以来、ファブリー 病スクリーニングでは精密検査が必要となった児は47名で、14名がファブリー病、8 名は異常なしと診断され、18名が経過観察中、6名が精査中、1名が精密検査中止、 という状況です。
 同様に、ポンペ病スクリーニングでは精密検査が必要となった児は63名で、41名 が経過観察中、8名は異常なしと診断され、1名が未受診13名が精査中です。
 上記検査項目に加え、2019年4月より、ゴーシェ病、ムコ多糖症I型、ムコ多糖症 II型の3項目を追加し実施されています。検査開始以来 、2020年9月末までに 、54,467名の新生児が検査なされました。ゴーシェ病スクリーニングでは精密検査が 必要となった児は1名で、この1名がゴーシェ病と診断されました。ムコ多糖症I型ス クリーニングでは精密検査が必要となった児は5名で、1名が経過観察中、4名が精 査中です。ムコ多糖症II型スクリーニングでは精密検査が必要となった児は36名 で、1名がムコ多糖症II型で生後3ヶ月より酵素補充療法を開始なされました。17名 が経過観察中、4名は異常なしと診断され、14名が精査中です。

  • ファブリー病スクリーニング

    福岡県 受検数 要精密数 確定数 発見頻度
    2014年度(7月~3月) 8,487 5 3 1/2,829
    2015年度(4月~3月) 15,725 9 1 1/15,725
    2016年度(4月~3月) 22,780 9 1 1/22,780

    2017年度(4月~3月)

    36,229 11 6 1/6,038
    2018年度(4月~3月) 37,448 3 1 1/37,448
    2019年度(4月~3月) 36,226 8 2 1/18,113
    2020年度(4月~9月) 18,241 2 0 -

    患者発見頻度1/12,509(175,136名検査、14名発見)

  • ポンペ病スクリーニング

    福岡県 受検数 要精密数 確定数 発見頻度
    2014年度(7月~3月) 8,487 8 0 -
    2015年度(4月~3月) 15,725 8 1※1 -
    2016年度(4月~3月) 22,780 13 0 -
    2017年度(4月~3月) 33,229 16 0 -
    2018年度(4月~3月) 37,448 3 0 -
    2019年度(4月~3月) 36,226 3 0 -
    2020年度(4月~9月) 18,241 12 0 -
  • ゴーシェ病スクリーニング

    福岡県 受検数 要精密数 確定数 発見頻度
    2019年度(4月~3月) 36,226 1 1 1/36,226
    2020年度(4月~9月) 18,241 0 0 -

    患者発見頻度1/154,467(54,467名検査、1名発見)

  • ムコ多糖症Ⅰ型(MPS1)スクリーニング

    福岡県 受検数 要精密数 確定数 発見頻度
    2019年度(4月~3月) 36,226 2 0 -
    2020年度(4月~9月) 18,241 3 0 -
  • ムコ多糖症Ⅱ型(MPS2)スクリーニング

    福岡県 受検数 要精密数 確定数 発見頻度
    2019年度(4月~3月) 36,226 23 1 1/36,226
    2020年度(4月~9月) 18,241 14 0 -

    患者発見頻度1/54,467(54,467名検査、1名発見)

ご案内

セミナーのご案内

 本年7月19日(日)に熊本大学大学院生命科学研究部小児科学講座、一般社団法人日本小児先進治療協議会主催の「第9回九州新生児スクリーニング研究会」が開催されました。本会は先天代謝異常症の研究や治療に関わる先生方また自治体、検査機関など多くの方々が参加され、講演、情報共有、議論がなされる場となっております。今回は新型コロナウイルス感染予防対策として限定オンライン視聴の形式にて開催されました。以下、概要を報告いたします。
 まず、中村公俊先生から厚労省中村班の活動報告として先天代謝異常症を中心とした新生児スクリーニング対象疾患の診断・治療、生涯にわたる支援を目指し活動しておりスクリーニング対象疾患である難病をほぼ網羅した診療ガイドラインの作成及び改訂(2019年)、特殊ミルク治療ガイドラインの作成(2020年)について説明がありました。また、本年度は「移行期医療と成人期の診療体制の整備と診療モデルに基づく診療ガイドラインの作成」などに取り組まれているという報告がありました。
 続いて、澤田貴彰先生並びに水上智之先生より現在、熊本県で実施しているライソゾーム病および免疫不全症の新生児スクリーニングの報告がありました。ライソゾーム病スクリーニングについては発見された患者さんは慎重なフォローアップを受けており適切な時期に治療(酵素補充療法:ERT)が開始されその効果も得られていること、ERTだけでは不十分な症例に対するさらなる治療の発展が期待されるとのお話もありました。また、2019年2月から開始した免疫不全症のパイロットスクリーニングにおいて要精密対象は2名であったこと、そのうち1名はT細胞減少症の所見が診られたことから生ワクチン(ロタウイルスワクチン)の接種を回避できたとの詳細な報告がありました。ロタウイルスワクチン(本年10月より定期接種化)は重症複合免疫不全症(SCID)の所見を有する者は接種不適当者となっており、免疫不全症の児を早期に見つけてワクチン接種を回避する上ではスクリーニング検査は有用な手段になるのではと報告がありました。澤田浩武先生からは宮崎県において本年4月より有料拡大スクリーニングとしてライソゾーム病(ポンペ病、ファブリー病、ゴーシェ病、ムコ多糖症I/II型)及び重症複合免疫不全症(SCID)のスクリーニングを開始したと報告がありました。今後の取組みとして前述のロタウイルスワクチン定期接種に伴うSCID検査の一部公費負担、脊髄性筋萎縮症(SMA)への検査対象疾患拡大について進めていかれるとの報告もありました。
 羽田明先生より、2020年5月より千葉県にて公益財団法人ちば県民保健予防財団が専門病院及び検査機関と協力しSMA新生児スクリーニング検査を追加する研究を開始したこと、2021年度より有料検査として実装、公費検査として許可されることを目指すとの報告がありました。

新棟竣工及び移転のお知らせ

ご案内

かねてより本社隣接地に建築中でありました弊社「新生児スクリーニングセンター」の新棟が完成し、去る11月12日に竣工式を執り行いました。新棟での業務開始は12月1日を予定しております。従業員一同、心を新たにしてより一層、職務に精励してまいります。
【新住所】〒860-0083 熊本市北区大窪一丁目7番35号