トピックス

つなぐだよりvol.6 2023.6

子どもを難病から守り、明るい未来へ

ご挨拶

福岡県における新たな拡大新生児マススクリーニング検査開始にあたって

 平素より大変お世話になっております。
 福岡県における拡大新生児マススクリーニング検査は2019年4月よりライソゾーム病5疾患(ファブリー病、ポンペ病、ゴーシェ病、ムコ多糖症のⅠ型及びⅡ型)を対象として実施されて来ましたが、2023年6月1日からは新たに重症複合免疫不全症(SCID)と脊髄性筋萎縮症(SMA)の検査が追加、開始されました。
 今回の変更は、実施主体である一般社団法人IBUKI様、福岡県産婦人科医会様並びに福岡県助産師会様、関係する専門医の先生方のご協力の賜物であり、この事業に検査センターとして携わることができ、大変光栄に存じます。
 また、各産科分娩施設様にはこの度の検査変更に際しては多大なるご協力を賜り、誠にありがとうございました。お陰様で検査変更のお手続きも円滑に進めることができました。つなぐだより福岡版第6号をお届けするにあたり、改めて深く感謝申し上げます。
今後とも適切かつ迅速に検査を実施し確実なご報告を行うことで、関係の皆様からの負託に応えていけるように専心努力してまいります。引き続きご協力とご支援を賜りますよう何卒よろしくお願い申し上げます。
KMバイオロジクス株式会社
新生児スクリーニングセンター長

トピックス

「福岡県拡大新生児マススクリーニング事業」実施主体法人移行のお知らせ

 一般社団法人IBUKI代表理事の廣瀨伸一先生(福岡大学医学部総合医学研究センター教授)より本年3月に福岡県内の拡大新生児マススクリーニング事業の実施主体法人移行についてのお知らせが出されておりますので、本文を転記してご紹介いたします。
 本年6月1日から実施主体法人が変わりました。

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各位
 早春の候、ますます御健勝のこととお慶び申し上げます。日頃より、拡大新生児マススクリーニング(有料新生児マススクリーニング)事業にご理解とご協力を賜り厚くお礼申し上げます。おかげ様で、福岡県、福岡市、北九州市で現在まで24万人の新生児がライソゾーム病のスクリーニングを受検しています。これにより、疾患が早期に発見され早期治療が開始できた症例が増えています。
 さて、これまで拡大新生児マススクリーニングはNPO法人IBUKI が主体となり実施してまいりましたが、将来の対象疾患の増加に備え、また実施組織の一層の強化、充実を図るため、令和5年6月1日より非営利型一般社団法人IBUKIとして実施することになりましたのでご報告いたします。
 これまで同様、一人でも多くの子どもたちのより良い健康を願い、拡大新生児マススクリーニング事業を実施して参る所存ですので、今後とも変わらぬご理解、ご支援賜りますようにお願い申し上げます。
令和5年3月吉日
一般社団法人IBUKI 代表理事 廣瀨 伸一
(福岡大学医学部総合医学研究センター教授)

産科医療機関からのQ&A

質問採血後の血液ろ紙の取り扱い、保管方法について教えてください。

回答採血後は、よく乾燥させ当日もしくは翌日には投函をお願いします。

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 新生児マススクリーニング検査では、専用のろ紙に血液を滴下した血液ろ紙で検査が行われます。この血液ろ紙は、採血から検査まで適正な条件下で管理されることが重要です。
 採血後のろ紙は、直射日光や高温多湿を避けて室温で2~4時間乾燥させます。このとき、水平を保って乾燥させることがポイントです。例えば洗濯ハサミなどで吊るして乾燥させたりすると血液スポットの上下に濃度差が生じてしまい、正しい検査結果が得られません。
 血液ろ紙検体の状態においても時間と共に少なからず目的成分の変質や失活が進みます。また検査の目的である病気の早期発見・早期治療の観点からも早めの投函が大切です。やむを得ずすぐに投函できない場合は、ビニール袋に入れるなどして冷蔵保管をお願いします。この場合も良く乾燥させた後であることが重要です。乾燥不十分な状態ですと、成分の変性が起きてしまいます。血液ろ紙の保管方法などご不明な点がありましたら、弊社検査センターへご遠慮なくお問い合わせください。

拡大スクリーニング検査
実施状況

2023年3月までに実施された、国指定難病(ライソゾーム病)の拡大スクリーニング検査実施状況をお知らせします。

<拡大スクリーニング検査実績まとめ>

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要精密数

検査の結果病気の疑いがあるため、精密医療機関の受診をお願いした方の数

診断確定数

精密検査機関で、疾患と診断が確定した方の数

ライソゾーム病とは...

 特定の遺伝子異常により、ライソゾーム酵素の欠損または活性が低下し、本来分解されるべき基質が細胞内に蓄積し、正常な細胞活動ができなくなることで発症する先天性代謝異常症です。
 ライソゾーム病としては現在、60種類以上の疾患が報告されており、主な疾患として、ファブリー病、ポンペ病、ゴーシェ病、ムコ多糖症などが挙げられます。

福岡での詳細データ

●ファブリー病

福岡県受検数要精密数確定数
2014年7月~ 2022年3月 226,340 64 22
2022年4月~ 2023年3月 33,091 9 0
合計 259,431 73 22

患者発見頻度:1/11,792 (259,431名検査、22名発見)
(参考)患者発見頻度:1/11,197 (526,270名検査、47名発見)(熊本・福岡での実績集計)

●ポンペ病

福岡県受検数要精密数確定数
2014年7月~ 2022年3月 226,340 88 1
2022年4月~ 2023年3月 33,091 6 0
合計 259,431 94 1

※乳児型のみ集計

患者発見頻度:1/259,431 (259,431名検査、1名発見)
(参考)患者発見頻度:1/409,967 (409,967名検査、1名発見)(福岡・熊本での実績集計)

●ゴーシェ病

福岡県受検数要精密数確定数
2019年4月~ 2022年3月 105,671 1 1
2022年4月~ 2023年3月 33,091 0 0
合計 138,762 1 1

患者発見頻度:1/138,762 (138,762名検査、1名発見)
(参考)患者発見頻度:1/57,026 (228,104名検査、4名発見)(福岡・熊本での実績集計)

●ムコ多糖症Ⅰ型(MPS1)

福岡県受検数要精密数確定数
2019年4月~ 2022年3月 105,671 5 0
2022年4月~ 2023年3月 33,091 0 0
合計 138,762 5 0

●ムコ多糖症Ⅱ型(MPS2)

福岡県受検数要精密数確定数
2019年4月~ 2022年3月 105,671 72 1
2022年4月~ 2023年3月 33,091 28 0
合計 138,762 100 1

患者発見頻度:1/138,762 (138,762名検査、1名発見)
(参考)患者発見頻度:1/228,093 (228,093名検査、1名発見)(福岡・熊本での実績集計)

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大切な赤ちゃんへ
お父さん、お母さんから
最初のプレゼント

早期発見で治療が可能に!

生まれてすぐに
指定難病の検査ができます ※指定難病は、ライソゾーム病、
重症複合免疫不全症、脊髄性筋萎縮症

今回紹介の病気

ライソゾーム病とは

酵素異常や欠損により発症する疾患で難病(ファブリー病、ポンペ病など)に指定されています。生まれてすぐに検査する新生児マススクリーニングろ紙血を使用した検査が可能です。

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パパママになる皆さまへ

 子どもの健やかな成長を願う気持ちは、どの家庭も変わりありません。しかし、もしわが子に難病を発症するリスクがあったとしたらどうでしょう。今は、公費で行われている先天性代謝異常等検査に加え、国指定の難病「ライソゾーム病」の拡大スクリーニング検査が、出生時に採取するわずかな血液(血液ろ紙)でできるようになりました。早期発見、早期治療で赤ちゃんの発症、重症化予防につなげるために検査を受けましょう。

QRコード

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  • 検査内容

     新生児スクリーニング検査とは、生まれつき特定の酵素が欠損、あるいは特定のホルモンが不足することなどで、知的障害や身体の発育に障害を起こす先天性の疾患等について早期発見するための検査です。

  • 検査方法

     生まれて4~6日目の赤ちゃんのかかとから少量の血液を採取し、新生児スクリーニングセンターで検査します。新生児マススクリーニング検査は、公費検査とその他の疾病(ライソゾーム病等)を検査する拡大検査があります。拡大検査を希望されても、追加の血液採取はありません。

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  • 検査申し込み先

     出産予定の産科医療機関(分娩取扱施設、産院、助産院)に申し込みをしてください。

image検査に関すること、申し込みについての詳細は、出産予定の産科医療機関にお尋ねください。