トピックス

IBUKI通信[第5号]より情報をお届けいたします。2017.04.01

ごあいさつ

平素はライソゾーム病のパイロット検査にご高配を賜り、厚くお礼申し上げます。お陰さまで、福岡県では、2014年7月に検査を開始し、福岡ブロック、筑豊ブロック、更に北九州ブロックや筑後ブロックの一部の施設様からもご参加いただき、2017年2月末現在、76施設へと拡大しました。
またこの度、福岡県産婦人医会北九州ブロック会長の濱口欣也先生にご支援いただき、本年4月より北九州地区においてもパイロット検査を開始させて頂くことになりました。北九州地区の分娩取扱い施設様におかれましても検査開始趣旨のご理解、またご協力いただき感謝申し上げます。
このライソゾーム病は我が国では医療費助成対象の難病であり、ファブリー病やポンぺ病など31疾患が指定難病の対象となっております。治療法についても現在用いられている酵素補充療法(ERT)のほか、開発中のケミカルシャペロン療法や、あくまで研究段階ではありますが遺伝子治療の研究も進められています。患者さんにとってより高いQOL(生活の質)を実現できる治療法が更に開発されることを期待致します。
患者さんがもれることなく検査でみつかり早期に適切な治療が受けられることを願いつつ、検査状況の報告をさせていただきます。

一般社団法人IBUKI理事長 廣瀨伸一(福岡大学医学部小児科 主任教授)

患者と家族の会主催のセミナーのご案内

セミナーimage

一般社団法人「全国ファブリー病患者と家族の会」(別称:ふくろうの会)主催の「九州ブロック福岡オープンセミナー2017」が、平成29年4月9日(日)福岡大学病院にて開催されます。ふくろうの会は、難病医療推進を通じ、患者と家族が一体となって医療の発展と向上に寄与し、また医療サービスの地域間格差を是正し、会の発展とあわせて会員相互の融和と親睦をはかることを目的として2002年に設立された組織です。会では、セミナーの開催やホームページの運営を行い、少しでも患者・家族のQOLの向上、悩みや不安を軽くできるよう活動されています。

実施状況

井上貴仁先生image福岡大学医学部小児科
講師井上 貴仁

本検査は、福岡県産婦人科医会の福岡ブロック会や筑豊ブロック会のご支援と福岡県内76の分娩取扱い施設様のご協力、並びに保護者の方々のご理解を得ながら、実施させていただいております。2014年7月に検査を開始以来、2017年2月末までに44,950名の新生児を検査いたしましたので、その状況を報告させていただきます。
検査開始以来、ファブリー病スクリーニングでは精密検査が必要となった児は23名で、5名がファブリー病、6名は異常なしと診断され、10名が経過観察中、1名が精査中、1名が精密検査中止、という状況です。
同様に、ポンペ病スクリーニングでは、精密検査が必要となった児は29名で、22名が経過観察中、6名は異常なしと診断され、1名が精査中です。

  • ファブリー病スクリーニング

    福岡県 研究項目受検査数 要精密数 確定数 発見頻度
    2014年度(7月~3月) 8,487 5 3 1/2,829
    2015年度(4月~3月) 15,725 9 1 1/15,725
    2016年度(4月~2月) 20,738 9 1 -

    患者発見頻度:1/8,990(44,950名検査、5名発見)

  • ポンペ病スクリーニング

    福岡県 研究項目受検査数 要精密数 確定数 発見頻度
    2014年度(7月~3月) 8,487 8 0 -
    2015年度(4月~3月) 15,725 8 1※1 -
    2016年度(4月~2月) 20,738 13 0 -

    ※1 第3号(2016年4月)にて確定と報告しましたが、現在両親の精査並びに経過観察中

北九州地域での検査開始

この度、福岡県産婦人科医会北九州ブロック会長の濱口欣也先生にご支援いただき、北九州地区のすべての分娩取扱い施設(38施設)において2017年4月よりパイロット検査を開始することになりました。実施状況については次号にて報告いたします。
検査開始にあたり趣旨のご理解、ご協力いただいた皆様方に感謝申し上げます。

精密検査

ファブリー病

治療は、対象療法と酵素補充療法に大きく分けられます。またこの他に現在開発中のケミカルシャペロン療法、研究段階である遺伝子治療があります。
ファブリー病は「α-ガラクトシダーゼ」という酵素が欠損したり、活性が低下しているためにおこる疾患です。酵素補充療法は、この欠損したり活性の低下している「α-ガラクトシダーゼ」を薬剤として点滴にて補充する治療法です。我が国では2004年に製剤承認されています。効果としては、四肢末端痛の軽減や発汗障害、心筋肥厚の改善などが報告されております。臓器障害が進行した後では、治療効果が低いことが報告されており、早期治療開始が重要とされています。
シャペロン療法は活性が低下している「α-ガラクトシダーゼ」分子に寄り添う低分子化合物を作用させることにより、酵素活性を高めるという治療法です。内服薬であり、点滴の必要性がないことなどがメリットです。有効な症例、そうでない症例があることが分かっており、海外での臨床治験の結果が報告されています。
遺伝子治療は遺伝子導入技術を用いた一度の治療にて、患者自身が「α-ガラクトシダーゼ」分子をつくることができるようにする治療法です。海外も含め現在研究が進められています。

ポンぺ病

ファブリー病同様、治療は対象療法と酵素補充療法に大きく分けられます。
酵素補充療法は、ポンペ病患者にて欠損あるいは活性が低下している「酸性-α-ガラクトシダーゼ」を点滴にて補充する治療法です。我が国では2007年に製剤承認されています。乳児型患者では生命予後の改善、著名な臨床症状の慶全、遅発型患者では歩行ならびに呼吸機能の悪化の防止の報告がされています。寄り高い治療効果を得るため、発症前あるいは発症直後からの治療開始が重要となります。
ポンペ病においてもケミカルシャペロン療法や遺伝子治療の研究が進められています。

※検査に係る費用等の詳細は、かかりつけの産科医療機関にお尋ねください。