トピックス

IBUKI通信[第4号]より情報をお届けいたします。2016.10.01

ごあいさつ

平素はライソゾーム病のパイロット検査にご高配を賜り、厚くお礼申し上げます。お陰さまで、福岡県では、2014年7月に検査を開始し、福岡ブロック、筑豊ブロック、更に北九州ブロックや筑後ブロックの一部の施設様からもご参加いただき、2016年8月末現在、72施設へと拡大していました。ライソゾーム病はライソゾーム内の酸性分解酵素の遺伝的欠損により、ライソゾーム内に大量の脂質、あるいはムコ多糖などを蓄積し、肝臓・脾臓の腫大、骨変形、中枢神経障害など、種々な症状を呈する疾患群であり、現在60種の疾患が含まれています。わが国では、ライソゾーム病は医療費助成対象の難病であり、ファブリー病やポンペ病など31疾患が指定難病の対象となっています。
また、ライソゾーム病は同一疾患でも病型によって症状は異なりますが、心臓肥大の患者さんの3%が成人型のファブリー病であったという報告や、慢性血液透析患者におけるスクリーニングでは、男性透析患者の0.2~1.2%がファブリー病であったという報告もあり、病気が見過ごされている可能性がある型も数多くおられます。
患者さんが埋もれることなく検査で見つかり早期に適切な治療が受けられることにより、日常生活におけるQOLが改善されることを願いつつ、検査状況の報告をさせていただきます。

一般社団法人IBUKI理事長 廣瀨伸一(福岡大学医学部小児科 主任教授)

ご案内

ご案内image

新生児スクリーニングの対象疾患の診断や治療の進歩は著しく、専門医、小児科医、産婦人科医、家族などにおける情報の交換がより必要とされています。本会議は、九州地区の医師、医療関係者に対して、新生児スクリーニングに関わる分野の事項を再診の知識とともに分かりやすく解説し、同時に地域の新生児スクリーニング対象疾患の診断と治療の知識を高めることを目的として開催されています。

実施状況

井上貴仁先生image福岡大学医学部小児科
講師井上 貴仁

本検査は、福岡県産婦人科医会の福岡ブロック会や筑豊ブロック会のご支援と福岡県内72の分娩取扱い施設様のご協力、並びに保護者の方々のご理解をいただきながら、実施させていただいております。2014年7月に検査を開始以来、2016年8月末までに33,286名の新生児を検査いたしましので、その状況を報告させていただきます。
検査開始以来、ファブリー病スクリーニングでは精密検査が必要となった児は18名で、4名がファブリー病、8名は異常なしと診断され、5名が精査中、1名が精密検査中止、という状況です。
ポンペ病スクリーニングでは精密検査が必要となった児は26名で、1名が酵素活性低値で経過観察中、17名は異常なしと診断され、8名が精査中です。
また、早期に診断できた患者様や経過観察中のお子様は、当院他にて適切適切にフォローされており、ご家族の安心にも繋がっていることに私共も意義を感じており、ご協力いただいています皆様方には心より感謝申し上げます。

  • ファブリー病スクリーニング

    福岡県 研究項目受検数 要精密数 確定数 発見頻度
    2014年度(7月~3月) 8,487 5 3 1/2,829
    2015年度(4月~3月) 15,725 9 1 1/15,725
    2016年度(4月~8月) 9,074 4 0 -

    患者発見頻度:1/8,322(33,286名検査、4名発見)

  • ポンペ病スクリーニング

    福岡県 研究項目受検数 要精密数 確定数 発見頻度
    2014年度(7月~3月) 8,487 8 0 -
    2015年度(4月~3月) 15,725 8 1※1 -
    2016年度(4月~8月) 9,074 10 0 -

    ※1 第3号(2016年4月)にて確定と報告しましたが、現在両親の精査並びに経過観察中

病気の症状

ファブリー病

典型的なファブリー病では、幼児期以降もしくは学童期から生じる手足の傷み(四肢末端痛)や汗をかきにくいこと(低汗症や無汗症)、それによる体温の上昇が認められます。その後、蛋白尿や被角血管腫、20代になると角膜混濁、腎障害、脳血管障害、心肥大を認めるようになります。この他、難聴、下痢などの消化器症状、精神症状などが認められます。学童期までの典型的な症状を呈さずに、成人期になり、心障害のみを認める心亜型や腎障害のみの腎亜型の遅発型もあります。ヘテロ接合体である女性患者では、無症状から重篤な臓器障害を有する症例まで、臨床症状は多彩です。

ポンぺ病

1)乳児型:生後2ヶ月頃哺乳力低下、筋力低下が出現し、フロッピーインファントとなります。心肥大、巨舌、肝腫大を認めます。自然歴では、乳児型は18ヶ月までに全例が死亡します。死因は新機能障害、呼吸障害です。 2)遅発型(小児型・成人型):小児型は生後6ヶ月~幼児期に発症し、筋力低下が徐々に進行します。2歳以降の発症例では心肥大症状は伴わないことが多く、呼吸不全や感染症を繰り返します。成人型は10歳以降に発症し、60歳代に気づかれる症例もあります。骨格筋の障害が主で、心筋障害はまれです。 このように、遅発型の重症度には幅があります。遅発型の症状の主なものとしては、近位筋優位の筋力低下があげられます。骨格筋の症状として、運動が苦手である、脊柱側湾症、腰痛などが認められます。呼吸筋の障害のため、疲れやすい、息切れ、風をこじらせやすいなどの症状が認められます・

※検査に係る費用等の詳細は、かかりつけの産科医療機関にお尋ねください。