トピックス

IBUKI通信[第7号]より情報をお届けいたします。2018年4月

ごあいさつ

 平素はライソゾーム病のパイロット検査にご高配を賜り、厚くお礼申し上げます。お陰さまで、福岡県では、2014年7月に検査を開始しましてから、2018年2月末現在、127の分娩取扱い施設様(福岡県内の95%)にご参加をいただいております。
検査開始に向けてご支援をいただきました福岡県産婦人科医会や分娩取扱い施設の皆様、更に検査を受けることに対してご理解をいただいた保護者の方々に心より感謝申し上げます。
 ライソゾーム病においては、ファブリー病、ポンペ病を始め、ゴーシェ病やムコ多糖症などに対する酵素補充療法が保険診療として行われるようになりました。しかし、症状が進行してしまってから治療すると、治療の効果が限定されてしまうことがあります。発症前に見つけて治療が開始できれば、同じ治療をするにしても患者さんが受ける治療の効果・メリットは大きく違うと感じます。
 患者さんが埋もれることなく検査で見つかり、早期に適切な治療を受けることにより、日常生活におけるQOLが改善されることを願いつつ、検査状況の報告をさせていただきます。

一般社団法人IBUKI理事長 廣瀨伸一(福岡大学医学部小児科 主任教授)

患者と家族の会主催セミナーのご報告

セミナーimage

一般社団法人「全国ファブリー病患者と家族の会」(別称:フクロウの会)主催の「九州ブロック福岡オープンセミナー2018」が、平成30年4月8日(日)福岡大学病院にて開催されました。ふくろうの会は、難病医療推進を通じ、患者と家族が一体となって医療の発展と向上に寄与し、また医療サービスの地域間格差を是正し、会の発展とあわせて会員相互の融和と親睦をはかることを目的として2002年に設立された組織です。会では、セミナーの開催やホームページの運営を行い、少しでも患者・家族のQOLの向上、悩みや不安を軽くできるよう活動されています。

実施状況

井上貴仁先生image福岡大学医学部小児科
福岡大学西新病院小児科
准教授井上 貴仁

 本検査は、福岡県産婦人科異界のご支援の下、各分娩取扱い施設様のご協力と保護者の方々のご理解を得ながら実施させていただいており、契約施設における直近の検査希望率は94%程度となっています。2014年7月に検査を開始以来、2018年2月末までに80,211名の新生児を検査いたしましたので、その状況を報告させていただきます。
 検査開始以来、ファブリー病スクリーニングでは精密検査が必要となった児は32名で、7名がファブリー病、6名は異常なしと診断され、13名が経過観察中、5名が精査中、1名が精密検査中止、という状況です。
 同様に、ポンペ病スクリーニングでは精密検査が必要となった児は45名で、33名が経過観察中、6名は異常なしと診断され、6名が精査中です。
 また、早期に診断できた患者様や経過観察中のお子様は、当院他にて適切にフォローされており、ご家族の安心にも繋がっていることに私共も意義を感じており、ご協力をいただいています皆様方には心より感謝申し上げます。

  • ファブリー病スクリーニング

    福岡県 研究項目受検査数 要精密数 確定数 発見頻度
    2014年度(7月~3月) 8,487 5 3 1/2,829
    2015年度(4月~3月) 15,725 9 1 1/15,725
    2016年度(4月~3月) 22,780 9 1 1/22,780

    2017年度(4月~2月)

    33,219 9 2 1/16,610

    患者発見頻度1/11,459(80,211名検査、7名発見)

  • ポンペ病スクリーニング

    福岡県 研究項目受検査数 要精密数 確定数 発見頻度
    2014年度(7月~3月) 8,487 8 0 -
    2015年度(4月~3月) 15,725 8 0※1 -
    2016年度(4月~3月) 22,780 13 0 -
    2017年度(4月~2月) 33,219 16 0 -

    ※1 第3号(2016年4月)にて1名確定と報告しましたが、現在経過観察中

診断方法

下記の臨床症状、臨床検査に基づいて行います。

ファブリー病

1.臨床症状

臨床症状が多様なため、3つに病型分類される。

  • 古典型:学童期までに四肢末端痛、発汗異常、被角血管腫で発症、20歳代よる尿蛋白、角膜混濁を認め、30~40歳代より腎不全、脳血管障害、心肥大を呈する
  • 遅発型:四肢末端痛、発汗異常、被角血管腫などの古典型に特徴的な症状を呈さず、成人になり、腎障害や心障害を認める。以前の心亜型や腎亜型は遅発型に含まれる
  • 女性患者:ヘテロ接合体の女性患者では、無症状から重篤な臓器障害を呈する例まで症状は多彩である

2.臨床検査

a.血漿、または尿中にごろボトリアオシルセラミド(GL-3、Gb-3、別名CTH)か、グロボトリアオシルスフィンゴシン(lyso-Gb3)の蓄積を認める
b.白血球、または培養線維芽細胞中のα-ガラクトシダーゼA(α-Gal A)の活性低下
c.腎生検による光学顕微鏡所見として糸球体たこ足細胞の泡沫上変化、電子顕微鏡所見では基質の蓄積を示すたこ足細胞内の同心円状の構造物を認める
d.心生検では、光学顕微鏡所見での心筋細胞の空胞様変化、電子顕微鏡所見では腎臓と類似した同心円状の構造物を認める
e.学童期以降の眼科的診断で、本疾患に特徴的な渦状角膜混濁を認める
f.遺伝子解析でα-ガラクトシダーゼに遺伝子変異を認める

疑診:上記臨床症状に加えて、a,c,d,eを認めれば強く疑う
確定診断:bあるいはfを認める

ポンぺ病

1.臨床症状

近位筋優位の筋力低下を認める。鼻声や朝の頭痛を認める。乳児型では乳児期早朝にフロッピーインファント隣、心肥大を認める。

2.臨床検査

血液検査では、CKが上昇する(数百~数千IU/L)。AST、ALT、LDHも上昇する。乳児型では、心エコーで心筋の肥大を認める。小児型、成人型では、呼吸機能検査や睡眠時呼吸検査が有用である。筋生検にて筋組織のライソゾームにグリコーゲンの蓄積を認め、筋繊維の空胞変性を認める。成人型においては、時に典型的ではない。生化学的に筋組織中のグリコーゲン含量が増加している。

確定診断:筋組織あるいは培養皮膚繊維芽細胞を用いて酸性α-グルコシダーゼを測定し、活性欠損を証明することである。遺伝子検査は、すでに診断されている同胞と同じ変異、あるいは病因であることが分かっている既知の変異が見つかったときは、確定診断に至る。

出典:右記のホームページを参考にしました。小児慢性特定疾病情報センター https://www.shouman.jp/(2008年3月8日現在)

※検査に係る費用等の詳細は、かかりつけの産科医療機関にお尋ねください。